医療法人社団愛語会 要町病院

腹水治療の今後

腹水治療センター

KM-CARTでは多量の自己アルブミンとグロブリンが回収できるだけでなく、濾過膜の洗浄水を回収することにより、多量の癌細胞、リンパ球も容易に採取可能です(写真3)。

写真3 胃癌症例 48歳M

今後、免疫細胞療法や抗癌剤感受性試験だけでなく、種々の基礎的、臨床的癌研究に活用できるものと考えられ、現在多施設での共同研究が開始されたところです。近い将来、KM-CARTの普及と癌治療への応用により癌性腹膜炎の治療は大きく変わると考えられます。

図3が、我々の考える癌性腹膜炎に対する治療戦略です。KM-CARTにより、まず症状緩和と栄養・免疫状態の改善を図り闘病意欲を回復させた後に、患者さん個々の癌細胞にあった化学療法、免疫細胞療法を行うことができれば、予後の改善につながるものと確信しています。

写真3 胃癌症例 48歳M

一般に癌性腹膜炎に大量の腹水貯留を来たした場合には、日々急速に全身状態の悪化を招くために"もう末期で手のほどこしようがない"と考えられ、治療を断念されるのが通常です。さらに腹部膨満感や呼吸苦が強くなれば、最後の緩和手段としてセデ-ションの対象になることもあります。KM-CARTは低侵襲且つ短時間で症状緩和が得られることより、在宅も含めたあらゆる緩和医療の現場で積極的に施行すべき療法です。

当センターでは患者さん、ご家族の希望があれば、余命1週間以内と考えられる患者さんに対しても積極的に施行しています。腹部の膨隆がなくなり症状緩和ができた状態で看取りを迎えることは、その後の遺族ケアにもつながります。

以上、KM-CARTは操作が簡便で多量の癌性腹水にも対応が可能な上に安全性が高く、自覚症状と全身状態の早期改善が期待できるため、"腹水は抜くと元気になる"ことになります。したがって、腹水による腹部膨満感が出現し始めたら、早期から積極的に腹水の全量をドレナージし、KM-CARTによる症状緩和を図らなければなりません。症状緩和により、全身状態の改善と闘病意欲の回復ができれば,化学療法など抗癌治療の開始や再開につながり、さらに長期の症状緩和が得られる可能性があります。

しかしながら医療者においてもCARTそのものがまだまだ認知されていないのが現状です。日本だけでなく世界中の腹水で苦しむ患者さんをなくすためにも、1日も早いKM‐CARTの普及が"当センターの使命"であり、医師、看護師、臨床工学士などを対象としたCART研修を積極的に受け入れています。

CARTについてのご相談・ご質問について

腹水治療、CARTについてのご相談、ご質問を受け付けています。ご希望の方は、担当の松﨑医師(メールアドレス:matsusaki@kanamecho-hp.jp)までメールして下さい。

CART研修(医療者対象)について

医療者(医師、看護師、臨床工学士)対象に、CARTの研修(実技、前后の管理)を受け付けています。ご希望の方は、担当の松﨑医師(メールアドレス:matsusaki@kanamecho-hp.jp)までメールして下さい。